おはようございます。神戸を中心に活動している税理士・公認会計士の押田大輔です。

いつもコラムをお読み頂き、ありがとうございます。

会社の儲けは損益計算書で表し、財産の状態は貸借対照表で表し、資金の動きはキャッシュフロー計算書で表します。

損益計算書は、売上がいくらで利益がいくら残っているのか、パッと数字で確認できますから比較的分かりやすい表です。

しかし、キャッシュフロー計算書や貸借対照表はその中身を理解することはなかなか難しいと言われています。

特に、貸借対照表はそれを加工して分析しなければその本質は理解不可能です。

さらにもっと言うと、会社の存続に最も大切な財務は、損益計算書やキャッシュフロー計算書や貸借対照表だけでは正確な理解はできません。

今日は財務を理解する上で欠かせない「資金別貸借対照表」についてお話しします。

 

キャッシュフロー計算書は、「利益」と「お金」の差を表すもの

会社の資金繰りを見る表として、「キャッシュフロー計算書」があります。

経営者の方は、毎月の月次資料としてキャッシュフロー計算書を確認されている方も多いと思います。

キャッシュフロー計算書を簡単に説明すると、「利益」と「お金」の関係を示す表です。

 

利益とお金の動きは必ずしも一致しません。むしろ一致しなくて当たり前です。

1.利益が出ているのにお金が残っていない

2.利益が出ていないのにお金が残っている

 

1の場合は売掛金や在庫、借入金の返済にお金が出て行っているケースが多くあります。

逆に2の場合は、不要な不動産や有価証券を売却し、売却損が出たため利益は出ていないがお金が入ってきている状態などです。

 

キャッシュフロー計算書は非常に有用な資料ですが、あくまで過去の資金の動きを確認する資料です。

キャッシュフロー計算書では、財務改善の方法は分かりません

そこで有効な資料が「資金別貸借対照表」です。

 

資金力が分かる「資金別貸借対照表」

「資金別貸借対照表」では、お金を4つの種類に分けます。

 ①損益資金、②固定資金、③売上仕入資金、④流動資金

 お金は1種類ではなく4つの種類があるという考え方です。

会社は使ったお金を増やすことで存続・成長しますが、その調達方法と使い途を4つの種類でそれぞれ確認していくわけです。

4つの種類それぞれ確認することで、財務の本質がとてもクリアーになります。

 

4つのお金の種類

①損益資金は、創業から現在までの利益の蓄積を表します。つまり、過去の蓄積により残っているはずのお金を示します。しかし実際のお金の残高とは異なります。なぜ違うのかが以下3つのお金の種類で示されます。

②固定資金長期的な資金の調達と運用を表します。不動産や投資などの長期的資金の運用を、長期借入金や資本金といった長期的資金で賄われているかを示します。

③売上仕入資金では、サイトの差を表します。売掛金や受取手形と、買掛金や支払手形とのバランスを示します。通常はサイト負けとなりますが、その負けを小さくする努力をしなければその分だけ運転資金が必要になります。

①~③を合計したものが「安定資金」です。安定資金はなんとしてもプラスにしなければなりません。

 

④流動資金はどれにも当てはまらないお金です。短期借入金、未払金、仮払金等でのお金のバランスを示します。この区分が大きな金額ですと安定した財務構造とは言えません。

 

増収増益でも…

増収増益の場合でも、資金別貸借対照表で分析すれば財務構造がクリアになります。

通常、増収増益であれば売上債権が増えますから、売上仕入資金は悪化します。

また資金の一時しのぎで短期借入金で資金調達をすれば、手持ち資金は増えますが、資金別貸借対照表では流動資金が増えただけですので財務構造は改善していないことが分かります。

資金別貸借対照表を使えば、利益ではなく資金ベースでの経営を行うことが出来ます。