おはようございます。
神戸の税理士・公認会計士・農業経営アドバイザーの押田大輔です。
今回は事業承継問題についてのご案内です。
中小企業の多くは、事業承継の様々な課題に直面しています。その中で多くの割合を占めているのが、後継者不在により廃業の危機に陥っている問題です。
廃業企業の約5割が経常黒字でありながら後継者不在を理由に廃業していると言われています。
この『事業承継問題』ですが、このままでは日本の経済にも大きな影響を与えることから、国を挙げて考えるべき問題となっています。今回は事業承継についてお伝えいたします。
事業承継の概要
事業承継は、単に社長を譲るだけでなく、経営権(実質面)を委譲し、かつ財産権がある自社の株式を後継者へ承継することが肝要です。その方法には、贈与、相続・遺贈、譲渡などがあります。以下では、これらの手続き・特徴をご紹介します。
手法 | 具体的手続き | 特徴 |
①贈与 | 贈与者の贈与の意思と受贈者の意思の合致で成立する契約です。贈与契約書等書面によることを推奨します。暦年贈与の場合年間110万円の基礎控除があります。 | 相続・遺贈に比較して、生前にあらかじめ対策を行っておけることがメリットです。一方で、年間110万円を超える金額(株価)を贈与した場合には、贈与税の申告が必要となります。この場合の贈与税は相続税に比較して負担は重くなるのが一般的です。 |
②相続・遺贈 | 経営者の死去に伴う相続、又は遺贈(遺言により承継すること)により次世代へ承継が行われます。相続の場合は遺産分割協議により承継が行われます。 | 贈与に比較して、税負担は軽くなります。一方で、相続は突発的に発生しますので、株価の高騰に対する事前の対策などを行っていない場合、思わぬ相続税を負担することとなることがあります。また、遺産分割協議が難航することで、スムーズな引き継ぎを行えないことも考えられます。 |
③譲渡 | 売買契約書を取り交わすことにより、金銭等を対価として株式の引渡しを行います。譲渡者に譲渡益がある場合、その譲渡益に対して20.315%の所得税及び住民税の課税があり、確定申告が必要となります。 | ・対価が適正額であるかが課税上問題とされます。高額・低額いずれにしても、左記の所得税のほかに、その時価との差額について贈与があったとみなされ、贈与税課税があります。よって、対価の設定が重要です。 ・先代としては、自社株を譲渡し金銭を得ることとなりますが、その後の金銭使徒についての対策に課題が残され、また後継者についても株式取得資金の調達に課題が生じます。 |
自社株式の承継対策
・ 暦年贈与
ケースにもよりますが、一番オーソドックスな方法としては上記1.①の暦年贈与が挙げられます。
年間110万円以内の贈与に抑える方法や、110万円を超える場合でも累進税率の低い領域で贈与する方法等が考えられます。
また、直系尊属から20歳以上の者に対しては特例税率(優遇税率)が認められていることから、一定の贈与税の負担を考慮しても、贈与額を増額して委譲のスピードを早めていくことも考えられます。
・ 相続時精算課税贈与
相続時に税額を精算するため、贈与時は2,500万円まで税負担無く贈与ができます。2,500万円を超えた場合は一律で超えた額に対して20%の贈与税です。
相続時の精算は、贈与時の株価により足戻しになります。
よって株を受けた後継者は、株価上昇による将来の相続税増額を心配せずに、経営に集中することができます。
なお、この制度を選択するためには所轄税務署に届出が必要で、その適用後は上記暦年贈与には戻れません。