おはようございます。
神戸を中心に活動している公認会計士の押田大輔です。
いつもコラムをお読み頂き、ありがとうございます。

今日は利益を予想する方法についてです。

「今月までの売上と利益は○○円なんだけど、最終決算時の利益を知りたい」。
予算を立てている会社であれば、「今の時点での予算達成率は○○%であるので、決算までに○○をしたい」。
利益が大きく出そうな会社であれば、「いまのうちに節税対策をしたいので決算数値の着地点を把握しておきたい」

など、経営者の方にとって決算時の利益を早い段階で把握しておきたいという思いは強いのではないでしょうか。

今日は簡単に利益を予想できる方法についてご紹介します。

 

 

費用から予想する

「利益の予想なんて難しくて出来ない」とお思いの方。ちょっと待ってください。
利益をする場合にはいくつかポイントがあります。
そのポイントを守れば簡単に利益予想は出来ます。

まずは費用から予想するということです。

損益計算書をお手元にご用意してください。できれば毎月の推移がわかる推移損益表があれば望ましいですが、なければ月次の試算表で構いません。

損益計算書のなかで「販売費及び一般管理費」という項目があります。製造業の場合は「製造原価」も加えてください。(簡略化のため以下、「管理費」と表現します
毎月の管理費の金額を見比べてみてください。なにか気づくことはないでしょうか?
勘が鋭い方はもうお気づきかもしれません。
毎月の管理費の金額はほぼ同じ金額で推移していませんか?

この費用は固定的要素が大きいので、基本的には毎月の金額がそれほど変化しないはずなのです。
管理費が毎月ほぼ一定の金額で推移している方は、費用の予想はこれで完成です!
昨年の金額をベースにして当期の費用を予想すればOKです。

とはいっても、「毎月の管理費の金額が全く違う!!」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
むしろ実務上はそういった方のほうが多いと思います。
なぜか?
主な原因は次の項目が影響しているからです。これらの項目を調整すれば費用の予想ができるようになります。

 

 

費用の予想に加える調整項目

毎月の管理費に変動がある場合、次の5つの項目に着目してみてください。

1.減価償却費
2.賞与
3.租税公課
4.材料費(主に製造業)
5.外注費(主に製造業)

これら3つの項目が毎月大きく変動していないでしょうか?
順番に説明します。

 

【減価償却費】
減価償却費の処理方法は大きく2つあります。
1つは決算の時に1年分の減価償却費を計上する方法。もう一つは1年分の減価償却費を12等分して毎月減価償却費を計上する方法。

もしあなたの会社が前者の方法によっていれば決算月にのみ減価償却費が計上されているので、決算月の管理費が大きくなっているはずです。
どちらの処理でも間違いではありませんが、出来るだけ毎月減価償却費を計上する方が望ましいでしょう。
決算で減価償却費を計上することによって一気に利益が大きく変動するからです。
減価償却費の金額が大きい会社でれば、今期は利益が出ると思っていたのに減価償却費を計上することで赤字になってしまうという事もあります。

【賞与】
次に賞与です。これはイメージがつきやすいと思います。賞与を支給した月は管理費の金額が大きくなります。
実は賞与の処理についても2つの方法がありますが、今回のコラムの内容と少し外れますのでその処理方法についてはまたの機会にご紹介します。

【租税公課】
最後に租税公課です。印紙や自動車税、固定資産税などの税金のことです。このうち利益予想に影響するのは固定資産税です。
土地や建物などを多く保有する会社では固定資産税の金額も大きくなります。
利益予想をする場合は、固定資産税の金額を把握しておきましょう。

【材料費と外注費】
これら2つの費用は売上高に金額によって変動する項目です。そもそも固定的要素はありません。
材料費・外注費の金額と売上高の比率を毎月計算してみてください。この比率は毎月一定しているはずです。
利益を予想する場合はこの比率がとても重要です。是非この比率をおさえておくことをお勧めします。
次の段落でご紹介する売上高の金額に比率をかければ材料費と外注費の金額が予想できます。

以上、これら5つの項目について調整できれば費用の予想はできるはずです。
業種によっては接待交際費や光熱費なども毎月の金額が大きく変動する場合がありますので、それらも調整項目に加えてみてください。

 

 

 売上高と粗利金額を予想する

次に売上高の予想です。
方法は過去の推移や当期のこれまでの期間の実績などから算出することになります。

ここでご紹介している内容は、計画(目標値)ではなく予想です。
「達成しなければならない売上高」ではなく、「このまま推移すればこうなるだろう」という予想値という意味です。
この辺りを混乱しないようにご注意ください。

売上高が予想できれば、粗利金額を予想します。
方法は簡単です。さきほど予想した売上高に粗利率をかければOKです。

そして粗利金額から管理費を差し引くことで利益の予想金額を算出します。

 

 

利益予想はいつするのか?

利益の予想はいつごろ行うのが良いのでしょうか?
私は決算3か月前を目安に実施することをお勧めします。
あまり早くに予想をしても実績値と大きく離れた予想だと役に立ちませんし、逆に決算ギリギリに予想をしても対策を打つことができません。
決算3か月前に予想をして納税計画も同時に立てるのが理想だと思います。

今回は決算数値の予想についてでした。