おはようございます。
公認会計士の押田大輔です。
いつもブログをお読み頂き、ありがとうございます。
今日は修繕費として認められる範囲についてです。
金額が大きい修繕費用の場合、必ず資産として計上すべきと思い込んでいませんか?
修繕費として費用計上すれば節税になりますので、修繕費なのか資本的支出(資産計上)なのかの判断基準を明確にしておきましょう。
修繕費と資本的支出とは?
まず建物などの固定資産にかかった修繕費用の会計処理についておさらいします。
固定資産の修繕費用はその内容により会計処理が異なります。
修繕によって資産の価値自体が上がる場合や耐用年数が伸びる場合は、資本的支出に該当します。
修繕にかかる費用のうち資本的支出に該当する部分は固定資産に計上することになり減価償却費として費用処理されます。
【例えば100万円の修繕費用の場合】
・全額が修繕費に該当する場合 ⇒ 100万円が一括で費用処理される
・全額が資本的支出に該当する場合 ⇒ 100万円は固定資産に計上され、その後(例えば10年間)で減価償却費として処理される
従って、修繕費として一括費用処理できた方が節税になると言えます。
そのためには「修繕費」と「資本的支出」の区分について正確な判断をしなければいけません。
資本的支出の例示
次の費用は原則として資本的支出に該当します。
①避難階段の取り付け等、物理的に付加した部分にかかる費用
②用途変更のための模様替え・改造・改装に要した費用
③品質又は高性能のものに取り換えた場合に要した費用
例えば畳部屋をフローリングに変えた場合の費用は用途変更になりますので、資本的支出になります。
受験勉強時代は、それぞれの赤文字(避・用・高)をとって「ひ・よ・こ」と覚えていました。
「ひよこ は資本的支出」とイメージすれば覚えやすいかもしれません。
(もっとも実務上は個々の状況に判断しますのでご注意を)
金額の大小によらず、必ず修繕費として経費処理できるもの
次にあげる修繕費用については、金額の大小によらず必ず修繕費として処理できます。
①通常の維持管理費や、壊れた部分の現状回復にかかる費用
②周期がおおむね3年以内に行われる修繕費用
例えば賃貸不動産物件の壁紙の張り替え費用や、外壁塗装の塗り替えなどは修繕費に該当します。
また「法定耐用年数を過ぎてからの修繕は資本的支出に該当する」と指摘される場合もあるようですが、このような指摘は間違いです。
上記に該当する修繕費用であれば、法定耐用年数を過ぎた場合であっても費用処理できます。
上記以外で修繕費の判断
上記以外の場合で修繕費と資本的支出の判断に迷う場合は、例えば以下の基準を満たしていれば修繕費とされます。
・修繕費用が60万円未満である
・修繕費用が、修繕にかかる固定資産の前期末取得価額のおおむね10%以下である
・災害による固定資産の現状回復費用
最も、明らかに資本的支出に該当する場合についてはこのような判断をする必要はありません。
まとめ
過去の裁判の中に、「雨漏りため、貸しビルの上に鉄骨を組んでカラー鉄板をふいた工事費約2,000万円」が修繕費とされた例もあります。
金額の大きさや物質が加わったからといってすぐに資本的支出に該当する訳ではありませんので注意しましょう。