おはようございます。
神戸の税理士・公認会計士・農業経営アドバイザーの押田大輔です。
今回は資金調達についてです。
新規で取引を開始しようとする銀行の担当者に三期分の決算書を渡した際、彼らがまずどこに目を向けるかを見ていると、貸借対照表の右下部分、つまり自己資本金額に真っ先に目を向けることに気付きます。
融資できる会社の大前提は、債務超過でないこと
債務超過とは、自己資本の金額がマイナスの状態、つまり、資産より負債の金額の方が多い状態をいいます。この状態で無担保の追加の融資をした直後にその会社が破たんしてしまうと、銀行にとっては自分たちが最後に貸したお金が他の銀行の融資の返済に充てられることになりますので、とても融資することなどできません。
注意すべきは、この債務超過額、銀行員は決算書の数字をそのまま鵜呑みにすることは決してなく、実態で把握するということです。
実態とは、資産の項目一つ一つについて、不良資産がないかどうかのチェックを入念に行い、もし不良資産があればその金額を自己資本の金額から差し引いた上での自己資本金額で判断するということです。
例えば、税務署へ提出した決算書の自己資本金額が2,000万円あっても、回収不能な売掛金が1,500万円、業界平均から見て過大な在庫金額が1,500万円あれば、差引▲1,000万円の債務超過という判定になり、この会社には貸せないなと判断するのです。これを銀行員は「実質債務超過」という言い方をします。
所有する土地が含み損を抱えていないか?
貸借対照表の資産の中でも比較的大きな金額となりやすいのが土地です。土地については、決算書上は当初買った金額で計上されており、何十年も前に購入した土地であれば、買った金額と現在の時価に開きがあるのが普通です。買った金額より現在の時価が大きく目減りしていることがあれば、多額の含み損を抱えていることになります。
この含み損の扱いについては、各金融機関によって取扱い上のルールが異なり、土地の含み損を自己資本金額から差し引いて判断する金融機関もあれば、本社や工場などの事業用不動産で売却することが考えられない土地の含み損については差し引かないルールの金融機関もあります。
ただ、遊休不動産の含み損については、どの金融機関も差し引いて判断しているようですので注意が必要です。
土地の時価をどのように計算するか
では、現在の土地の時価がいくらくらいかを確認する方法ですが、固定資産税評価額で確認するのが簡単です。毎年5月頃に送られてきます「固定資産税納税通知書」の「課税明細書」というページに土地の「価格」(課税標準額ではありません)という欄があり、その欄の記載金額が固定資産税評価額となります。固定資産税評価額は時価の70%程度と言われていますので、固定資産税評価額を0.7で割っていただければ概算の時価を計算できます。
他にも国税庁のHPの路線価図より路線価(1㎡当りの土地金額)を調べて、所有する土地の面積にかけていただければ路線価評価額が出せます。路線価は時価の80%程度となりますので、路線価評価額を0.8で割っていただければ概算時価が出てきます。
概算の時価が出ましたら、決算書上の簿価と比較していただき、その差額が含み損・含み益の金額となります。
含み損の金額が多額にあり、もし万が一、その含み損を自己資本金額から差し引いてマイナスになった場合でも、今後の融資は受けられないのかと悲観する必要はありません。遊休不動産でなく事業に使っている土地であれば、その含み損を差し引かない金融機関の方が現実にはほとんどのようです。
ただし、それも業績が良いときの話で、一度赤字に転落でもすれば、どう評価するか分からないのが銀行です。土地の含み損を差し引いて実質債務超過になるのであれば、それを今後何年で解消するのかが今後の経営課題となります。銀行の債務超過解消年数の目安は5年ですので、今後の事業計画作成の目安としていただければと思います。